猫と小説と煩悩と

BL小説書きの日記です。内容にBLを含みますので、閲覧にはご注意下さい。

 

J.GARDEN43お礼&フリーペーパー分SS 

J庭43に参加してきました。
5回目のサークル参加となりましたが、いつまで経っても慣れないものですね!
多少は落ち着いてきたかなと思ったのですが、やっぱり設営はギリギリだし、すぐテンパるし、舞い上がるし。
でも読んで下さった方から直接ご感想を聞けたり、お話ができる機会はやはりこういったイベントのみなので、とてもとても嬉しかったです。
スペースに足をお運びくださった方、お声がけくださった方、お手紙や差し入れをくださった方、本当にありがとうございました。
そして! もうなによりも!!
スペースが混む度にサッと助けて下さった月東先生がもう本当にありがたすぎて……。
もうなんとお礼を申し上げてよいのやら……。
とりあえず今度呑む時、一杯おごらせて下さい……!
本当にありがとうございました!

そしてそして、今回は新刊が早々に完売となってしまい、せっかく来てくださったのにお渡しできなかった方もいらして、大変申し訳ありませんでした。
通販申し込みます!と仰ってくださった方も、本当にありがとうございます。
次回春庭の参加はまだ未定なのですが、参加の場合、残部があれば持ち込みます。
ですが、それまでは通販の方に優先的に在庫を回しますので、確実に入手されたい方はコミコミさんの通販をご利用下さい。

コミコミスタジオさん

いつもの通り、フリーペーパー分のSSも上げておきます。
ご褒美、お楽しみ下さいませv

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『竜人と運命の対』番外編 ~ご褒美~

「アースラ、いる?」
 客室の扉をノックしながら、陽翔は声をかけた。
 ナジュドとの戦いが終結し、ジーンが竜王の座を継ぐと決めた夜のことだった。竜人族と共に戦ったソヘイル軍とキャラバンの面々は、明日にはこの地を去ることになっている。別れの宴はまだ続いていたが、キャラバンの女長、アースラは早々に部屋に引き上げており、陽翔は今までお世話になったお礼を言おうと部屋を訪ねてきたのだ。
「ああ、いるよ。入りな」
「うん、お邪魔しま……」
 アースラの応えに頷き、部屋に入りかけた陽翔だったが、皆まで言う前に固まってしまう。何故なら、そこには。
「おお、陽翔か。悪いが、このままでよいか?」
「いいわけがあるかい。さっさとどきな、ラヒム」
「だがタニリカ、これは私の『褒美』だからのう」
 床に座ったアースラの膝に頭を乗せて寝転がるソヘイルの王、ラヒムがいたのだ。
「な……っ、なっなっ、なにして……っ」
 カーッと顔を赤くして慌てる陽翔に、アースラがため息交じりに答える。
「……今回はこの人の手配が早かったおかげで、色々と助かったからね。なにか褒美でも、と聞いたらコレだよ」
「なににも代え難い、至福の時間だ」
 どうやらラヒムがご褒美にと望んだのは、アースラの膝枕だったようだ。愛する女を見上げ、ご満悦そうに目を細めるラヒムの額をぺちんと叩きながら、アースラが肩をすくめてみせる。
「で、なにか用かい?」
「よ……、用って、いうか……」
 照れるでもなく、ごくごく普通に用件を聞いてくるアースラに、陽翔は面食らってしまった。
 あまりにも堂々としている二人に、こっちの方が恥ずかしくなってしまう。用っていうかぁあ、と目を回しそうになった陽翔だったが、その時、背後から声がかけられた。
「陽翔、ここにいたのか」
「ジーン……!」
 振り返った陽翔の顔が真っ赤なことに気づいたジーンが、部屋の中を覗き込み、ああ、と合点する。
「……ご褒美中か」
(なんでそんな察しがいいんだよ……ッ!)
 内心呻いた陽翔をよそに、ジーンが二人に声をかける。
「取り込み中すまなかった。陽翔も挨拶に来ただけのようだから、また明日改める」
「ちょっ、勝手になに言って……っ、うわ……!」
 ジーンに向き直りかけた陽翔だったが、そこでジーンが陽翔をひょいっと片腕に抱き上げる。そのまま廊下を進む竜人の恋人に、陽翔はじとっとした視線を向けた。
「……オレ、アースラとゆっくり話したかったんだけど」
「あんな状態でまともに話せないだろう?」
 アースラはともかく、お前の方が無理だと言われて、陽翔は憤慨する。
「そんなこと……っ」
 けれど、自室に引き上げたジーンは陽翔を敷物の上に下ろすと、その膝に頭を乗せてごろりと床に横たわった。
「……なにしてんの、ジーン」
「羨ましくなった。俺も陽翔に膝枕してもらいたい」
「はあ?」
 なにを言い出すのかと目を丸くした陽翔だが、ジーンは赤い瞳を細めてじっとこちらを見つめてくる。愛しさが溢れるようなその瞳に、陽翔はどぎまぎと視線を泳がせた。
「……男の膝なんて、固いよ」
「ああ」
「オレの膝、ジーンの枕にするには小っちゃいし」
「そうだな。……でも、お前の膝がいいんだ、陽翔」
 長い腕を伸ばしたジーンが、鱗に覆われた指の背で陽翔の頬を撫でてくる。さらさらとしたその感触に促され、陽翔がジーンの大きな口元に唇を寄せた、その時。
「陽翔ー!」
「……っ!」
 バーン、と扉が開けられ、陽翔は思わずジーンを床に転がしていた。痛い、と呻いたジーンをよそに、部屋に飛び込んできたラビが大興奮で陽翔に告げる。
「いっ、いっ、今、長の部屋に行ったらな……!」
「……う、うん、知ってる。オレもさっき行ったから」
 熱くなった頬を手でパタパタ扇ぎながら言った陽翔に、ラビが肩の力を抜く。
「そうなのか? びっくりするよな! だってさ……」
「……ラビ」
 話を続けようとするラビに、ジーンが地を這うような低い声を発する。その背後では、太い尾がびったんびったん波打っていた。
「俺も今、『ご褒美中』だったんだが」
「え……」
「ラ、ラビ! 宴に戻ろう! な! ジーンも!」
 これ以上ジーンが妙なことを言い出さないうちにと、陽翔はそそくさと二人の背を押して部屋を出る。
「……ご褒美……」
 呻くジーンの背をぺちんとやりながら、陽翔は後で、とこっそり囁いたのだった。

~J.GARDEN43フリーペーパー~
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J.GARDEN43参加のお知らせ 

イベント参加のお知らせです。
10/1、池袋サンシャインシティにて開催のJ.GARDEN43に参加いたします。
サークル名は『猫と水玉』で、スペースはBホール(4F)せ10aです。


新刊は商業誌『竜人と運命の対』の番外編になります。

ユタンポ
『竜人と運命のユタンポ』(A5/44P/400円)

【あらすじ】
本編後、竜人の里で暮らし始めたジーンと陽翔。
しかし、2度目のオラーン・サランが近づく中、ジーンは何故か陽翔に避けられてしまう。
そんな折、里の周辺が急な寒波に見舞われ……。

ジーンと陽翔、交互視点でのお話になります。
最初は36Pの予定だったのですが、なんやかんやオーバーして44Pになりました。
甘々後日談ですが、ちょっとした戦いの場面もあります。
あと、今回も尻尾は大活躍です(笑)

通販はいつものコミコミスタジオさんにお願いしております。
中央書店コミコミスタジオさん

その他、既刊を2種持ち込み予定です。
『白狼王の愛嫁 番外編再録集Ⅰ』(A5/84P/600円)
『サーベルタイガーの蜜愛』(A5/52P/400円)

当日は著書等へのサインも承りますので、お気軽にお声がけ下さい。
もちろん、今回頒布の同人誌へのサインも喜んでさせていただきます。
ただ、基本的に私一人での対応となりますので、混雑時はいったんお預かりし、お時間を置いて後ほど取りにきていただく形をとる場合があります。
お手数をおかけしますが、ご容赦いただけたら幸いです。
それでは、お会いできるのを楽しみにしております! よろしくお願いいたします~!

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告知【ノベルス】 

リブレさんより『竜人と運命の対』が発売になりました。
今回はモフモフではなく、すべすべ人外です!
表紙デザインにもこだわっていただいたのですが、なんというかこういうアニメがあってもおかしくないな、というカッコよさですよね……。
いつも完成した表紙を見る度、この素敵な表紙の本を本当に私が書いたのか……? と疑ってしまうのですが、今回もまさにそれで。
私が書いたのか……、そうか……、と納得するのにしばらく時間がかかりました。
そんな素敵なイラストは、高世ナオキ先生がご担当下さいました。
高世先生はドラゴン、というか竜人が本当に本当にお上手で……!
後書きでもちょっと触れているのですが、高世先生は最初に攻めのジーンのラフをいただいた時に、3パターン竜人を描いてくださったのです。
和竜、恐竜、トカゲタイプと、これがもうはっきりと雰囲気が違うのにどれも素敵で、とても感動したのを覚えています。
竜人だけでなく、脇役含めて人間もとても魅力的に描いてくださっていますので、是非ともご覧下さい!


お話としては、異世界トリップものになります。
高校生の陽翔はある時、突然異世界に飛ばされてしまい、わけが分からないまま奴隷商人に掴まって売られてしまう。
その後、主人の元からどうにか命からがら逃げ出すが、力尽き、砂漠の真ん中で行き倒れてしまう陽翔。
そこを救ってくれたのは、とあるキャラバンで用心棒をしている竜人のジーンで――。


竜人というお題は、今回も担当さんよりいただきました。
次の人外ファンタジーは竜人とかどうですか、と言われた時、どうやったら竜人の魅力を書けるだろう、とものすごくわくわくしたのを覚えています。
世界観としては、以前に出した『サーベルタイガーの獣愛』と同じ世界になります。
なので、続編ではないのですが、サーベルタイガー獣人族のこともちょびっとだけ触れていたりします。
実はサーベルタイガーのご感想をいただいた際、いくつか自分の中で課題ができて。
そこになんらかの答えを出したかったということもあり、今回も赤い月の昇る世界を舞台にしました。

攻めのジーンは、キャラバンの用心棒的存在で、誰もが恐れる竜人です。
竜人の一族を離れ、人間たちと共に生きています。
寡黙で一匹狼な彼ですが、仲間たちと馴染まないようにしているのにはわけがあってという、私の大好きな、なんらかの過去を抱えて生きている攻めになりました。
受けの陽翔は、少年漫画の主人公みたいな子を目指して書きました。
元気で明るく、前向きで情に厚い、ごく普通の高校生です。
最近人外攻めでよく描いていたタイプの受けとはちょっと違うので、攻めのジーンに対する反応とかもまるで違っていて、そういった場面も楽しく書きました。

あと、今回は脇役もちょっと多めです。
いつもは一作の中であまり登場人物を多くしないように、と心がけているのですが、お話を作る上で、どうしてもこのポジションの人は名前付きで出てほしい、と思ってしまって。
どのキャラも気に入っているのですが、一人だけお気に入りを挙げるとしたら、なんといってもキャラバンの女長アースラです。
こういう姐御肌で、腕っ節も精神的にも強い美女が昔から大好きで大好きで。
いつか自分の作品にもこういう女の人を登場させたいと思っていたので、いろいろ設定を盛り込みつつ、登場の度に「大好き!」と思いながら書いていました。
他にもいろいろキャラが出てくるのですが、高世先生にはキャラバンの主要な仲間の挿絵を一枚入れていただいていて。
この描き分けが本当にお見事で、構図や表情、各キャラの小物も素敵な一枚なので、是非見ていただきたいです……!

大幅改稿、大幅減ページ、とかなり苦労した一作なのですが、それだけにとても愛着のある作品になりました。
お見かけの際はお手にとっていただけたら幸いです。
よろしくお願いいたします!

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告知【文庫】 

講談社ホワイトハート文庫さんより、『君のいる世界』が発売になりました。
イラストはあおいれびん先生です!
あおいれびん先生に高校生を描いていただけるなんて、幸運以外のなにものでもないですよね……!
表紙の夕陽がとても綺麗ですが、物語の中でもたくさん出てくる時間になります。
お話を読み終わった後、もう一度見ていただけたらいいなという表紙を描いて下さいました。
本文中の挿し絵も爽やかでカッコいい、男子高校生の魅力がたっぷり詰まったイラストばかりですので、是非ご覧いただけたら幸いです。

ネタバレを避けて、発表になっているあらすじで触れている部分だけでお話を説明しようと思うのですが、なかなか難しいですね……。
今回のお話は、ざっくり言うとタイムリープものになります。
元サッカー部のエースだった涼介には、ケガによりプロへの道を諦めたという過去がある。
失意の涼介を救ってくれたのは、部長でキーパーの龍だった。
以来親友になった二人だが、涼介は次第に龍のことを親友以上に想い始めている自分に気づくようになる。
葛藤しつつも、親友を失いたくないという思いから、気持ちをひた隠しにする涼介。
そんなある日、涼介は目の前で起きた交通事故により、龍を失ってしまう。
しかし翌日、涼介は不思議な出来事により龍の生きていた前日に戻り――。



今回のお話は、片想いの相手が生き延びる未来へ進むために、過去を繰り返すお話が書きたいなと思って作ったお話になります。
たくさんつらい思いもする二人ですが、そんな中でも男子高校生がわちゃわちゃっとしているところは楽しく書きました。
友達を好きになってしまったことへの葛藤とか、互いを思いやる気持ちとか、高校生らしい青春ものになったかなと思います。
果たして彼らは「君のいる世界」に進めるのか。
お手にとってお確かめいただけたら幸いです。
よろしくお願いいたします。

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J庭42に参加してきました。
なんだかんだで今回が一番反省した回になりました……。

というのも、前回新刊が売り切れになったのが悔しすぎたので、
今回搬入をだいぶ多くしてしまって。
よくよく考えたら、新刊2種の内1種だけ買えば大丈夫な方が多いのだから、
2種ともそこまで多くする必要はなかったのですよね……。
案の定スペースはぎっちぎち、今井先生がお手伝いくださらなかったら、
設営もちゃんと終わってなかったと思います……。
あと、最大のミスはサークル受付を忘れていたこと!!!!!
開場1分前に気づいて、ものすごく慌てて受付に飛んでいきました!!!!!
受付シールあらかじめ書いておいてよかった……。
始まってからも座るスペースなくて、最初の1時間位、
今井先生にもずっと立ちっぱなしでご対応いただいてしまって。
今回は、しっかり準備したけど、あれもこれもと欲張って自分のキャパを越えた感じでした。
新刊売り切れなかったのはよかったけど、それ以外はもう反省しきりです。
次回はもっとよくよく考えて、でも新刊は売り切れないように搬入したいと思います。
お越しくださった方々、そして今井先生、本当にありがとうございました!

通販ですが、今回もコミコミスタジオさんにお願いしております。↓

コミコミスタジオさん

現在新刊の『白狼王と恋妻の約束』が売り切れですが、
追納ができないかお伺いしているところです。
追納可になりましたら、またツイッターでお知らせさせていただきます。

また、今回ノベルティも大量に作りすぎて、余りまして(笑)
次回のJ庭に参加できたら持っていこうかなと思っています。
賞味期限は問題ないけど、間に夏があるのですよね。
冷蔵庫保管して白くならないかがちょっと心配で。
次回J庭前に確認して、問題なさそうだったら先着でお配りしますね。


今回も、フリーペーパー分のSSを上げておきます。
以前J庭39で配布した、「愛嫁のお昼寝」にもちょっと絡んでるSSになります。
お楽しみ下さいませ♪


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

『白狼王の恋妻』番外編
「恋妻のお昼寝」

 あるうららかな午後、書類を手に執務室に入った黒狼姿のラシードは、既視感のある光景に軽く目を瞠った。
 瀟洒な猫足付きの深緑色のソファの前で、ウルスが膝をついている。ソファの上では、小さな体を丸めたアディヤがすやすやと眠り込んでいた。
「……陛下」
 また愛嫁の寝顔に見入っているのだろうか、と内心苦笑しながらそっと声をかけるが、なんの反応もない。不思議に思ってウルスの顔を覗き込んだラシードは、驚いて何度か瞬きをした。
(これは、お珍しい)
 てっきり眠るアディヤを見守っているのだろうとばかり思っていた主は、ソファにもたれかかり、うたた寝をしていたのだ。その大きな獣人の手は、アディヤの小さな片手をしっかり包み込んでいる。
 奥庭ではたまに午睡を取っているようだが、ウルスはこの執務室では滅多に微睡んだりはしない。アディヤの寝顔を見ているうちにつられてしまったのだろうか。
(……このところ政務も立て込んでいたし、お二人ともお疲れなのだろう)
 少しスケジュールを詰め込みすぎただろうか、と振り返って反省しながら、ラシードは部屋に常備されるようになったブランケットを取り出した。爪を引っかけないよう気をつけながら広げ、ウルスの肩に、続いてもう一枚をアディヤの体にかける。
(今日はこのまま、お二人にはお休みいただこう)
 アウラガ・トム山の噴火の後処理も、仕事熱心な二人のおかげでほぼ片付いている。急を要するものはないはず、と確認しながらその場を後にしようとした、その時。
「んん……」
 小さくむずかるような声が聞こえたかと思った途端、ラシードの尻尾がぎゅっと掴まれる。背後を振り返ったラシードは、仰天した。
「ア……、アディヤ様⁉」
 ラシードの真っ黒な尾を引き寄せたアディヤが、穏やかな寝息を立てていたのだ。――おまけに。
「ん……、なんだ、ラシード……」
 ラシードの声で、ウルスが起きてしまう。くああ、とあくびをする主を前に、ラシードの背に戦慄が走った。
(……殺される!)
「へ……っ、陛下、これには理由が……!」
「騒がしいぞ、ラシード。アディヤが起きるでは……」
 ないか、と最後まで言い切る前に、ウルスが目を大きく見開く。その視線の先には、黒狼の豊かな尾を抱え込み、すうすうと幸せそうに眠る愛嫁の姿があって――。
「……ラシード」
 地を這うような低い声に、ラシードはこの時初めて、乳兄弟でもある主に対して、心の底から恐怖を感じた。
「これは、どういうことだ……」
「これは……っ、ですから、アディヤ様が私の尾を偶然! 偶然、掴んだだけで……!」
 先日手首を掴まれた時は、ラシードが人間姿だったこともあり、アディヤは夢うつつながらすぐに違うと言って、ウルスの尾を抱え込んでくれた。けれど今回は、ラシードも獣人姿のせいか、一向に気づく気配がない。
(間違えています、アディヤ様……っ! 私ではなく陛下の、陛下の尻尾を枕になさって下さい……!)
 眠り込んでいるアディヤに、必死に心の中で訴えかけるラシードだったが、その時やおらウルスが立ち上がった。
「このようなこと、偶然にしても許し難い……! すぐにアディヤから離れよ! さもなくば……」
 怒りの形相でウルスが怒鳴った、その時だった。
「ウル、ス……」
 むう、と顔をしかめたアディヤが、ラシードに相対しているウルスに手を伸ばす。むぎゅっと白銀の尾を掴んだアディヤは、むにゃむにゃと不明瞭な言葉を発した。
「怒っちゃ、だめ、で……」
 す、と吐息だけで囁きながら、そのまますう、とまた眠り込んでしまう。ふこふこの白銀の尾と漆黒の尾に顔を埋めたその顔は、ふにゃふにゃと至極幸せそうで。
「……へ、陛下……」
 アディヤを凝視したまま固まっているウルスに、ラシードはおそるおそる声をかけた。ハッとしたように我に返ったウルスが、ひどく不本意そうに低く唸る。
「……アディヤに免じて、今回は許してやる」
 今回だけだ、ととてつもなく不機嫌そうに言うウルスに、ラシードはほっとしつつ聞いた。
「しかし、このままでは二人とも動けませんが……」
 前回と違い、今回は椅子もない。立ったままずっと、アディヤが起きるのを待つつもりだろうか。
「致し方あるまい。……書類を貸せ」
 呻いたウルスが、ラシードから書類を受け取り、目を通し出す。どうやらこのまま仕事をするつもりのようだ。
「……今後は少し、スケジュールに余裕をもたせます。アディヤ様とのお昼寝の時間も、確保しますので」
「……頼む」
 すっかり眠り込んでしまったアディヤに尻尾を預け、白狼と黒狼の間でひそひそと会話が交わされる。贅沢な枕を手に入れた愛嫁のお昼寝は、まだ始まったばかりだった。

~J.GARDEN42フリーペーパー~

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