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猫と小説と煩悩と

BL小説書きの日記です。内容にBLを含みますので、閲覧にはご注意下さい。

 

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J.GARDEN46お礼 

J.GARDEN46に参加してきました!
今回は初のお誕生日席とあって、開催前からド緊張していたのですが、おかげさまで大きな混乱もなく、楽しいイベントとなりました。
雨の中スペースまで足をお運び下さった方々、お声がけ下さった方々、本当にありがとうございました。
差し入れやお手紙もたくさん頂戴して、荷物の整理をしていて嬉しさのあまりうっかり泣きそうになりました。
どれも大事に食べたり読んだりさせていただきますね。
ちょっと時間がかかってしまうかと思いますが、ご住所をご明記下さったお手紙にはお返事致しますので、今しばらくお待ち下さい。

新刊は、合同誌「10th Anniversary」も個人誌「sweet,sweet,sweets」もたくさん搬入したので完売にはならなかったのですが、それでも予想以上に多くの方にお手にとっていただけて、とても嬉しかったです。
中には10周年おめでとうございますと言って下さる方もいらして、まさかそんなお言葉をいただけると思っていなかったので嬉しい驚きでした。
なんというか準備期間中は一人でお祭りを開催して一人で楽しんでいたので、一緒にお祭りしていただけるんだ……!ととても感動してしまいました。
合同誌もSS集も、今までの感謝をめいっぱい込めて書いたので、楽しんでいただけたら幸いです。
よろしければ是非ご感想などもお聞かせ下さい。

通販についてですが、現在「10th Anniversary」のコミコミスタジオさん通販は品切れとなっています。
追納については相談・調整がつき次第、ツイッターなどでお知らせさせていただきます。
「sweet,sweet,sweets」の方は引き続きコミコミスタジオさんでお取り扱いいただいております。
「白狼王の愛嫁 番外編再録集1」はまだお取り扱いまで時間がかかるようなので、こちらも取り扱いが始まり次第、アナウンスさせていただきますね。

あとはツイッターでもちらっと告知させていただきましたが、『白狼王の愛嫁』の三作目が今夏に発売予定となります。
詳細は決まり次第お知らせさせていただきますが、こちらも是非是非一緒にお祭りを楽しんでいただけたら嬉しいです。

ではでは、いつも通り今回のペーパーのSSを載せておきます。
『ユキヒョウの獣愛』のジュストが、ディオルクと初対面したお話です。
紙で欲しいという方は、出版社宛にお手紙いただけたらお返事と一緒にお送りしますのでお気軽にどうぞ。
それではどうぞ、お楽しみ下さい。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

『ユキヒョウの獣愛』番外編  「族長の弱点」

 それは、ティタの母が無事意識を取り戻し、病が快方に向かった翌日のことだった。
「お初にお目にかかる。ディオルクと言う」
 遅れてしまっていた挨拶を兼ねて、ティタの母の病状の報告をと族長の館を訪れたジュストの前に現れたのは、威風堂々としたサーベルタイガー獣人、ディオルクだった。
(彼がティタの尊敬する族長、か)
 旅の途中、ジュストの恋人のティタは、自分の一族の族長は強く美しく、まさに完璧なのだと褒めちぎっていた。その言葉通り、目の前のディオルクは他のどのサーベルタイガー獣人よりも立派な牙と体格、そして見事な黄金の被毛の持ち主で、長としての貫禄と威厳に満ちている。
 ジュストとて、生まれつき獣人姿になれないティタが彼に憧れるのはごく自然なことだし、そこに恋愛感情はないと、理解はしている。だが、面白くないものは面白くない。
 内心複雑な感情を覚えつつもそれを表情には出さず、ジュストは白銀の被毛に覆われた己の手を差し出した。
「挨拶が遅れて申し訳ない。ユキヒョウ族の族長、ジュストだ。この度は世話になる」
「なにを仰る。世話になったのはこちらの方だ。あなた方ユキヒョウ一族の薬で、ティタの母は命をとりとめた。旅の道中、ティタも随分世話になったと聞いている。我が一族の者を助けて下さって、お礼の言葉もない」
 ジュストの手をがっしりと握り返したディオルクが、そう言って深々と頭を下げる。いかにも義に厚いサーベルタイガー一族の族長らしいその言葉と態度に、ますます複雑な気分になったジュストだったが、顔を上げたディオルクは思いもかけないことを聞いてきた。
「……時にジュスト殿。貴殿、狩りは得意か?」
「は……?」
 アイスブルーの瞳を瞬かせたジュストに、ディオルクが大真面目な顔でもう一度、狩りだ、と繰り返した。


 どさ、と捕ってきた獲物を山積みにして、ジュストは肩で息をした。
「……っ、さすがに、これだけ捕ればよかろう」
 慣れない土地での狩りとあって、最初は獲物の潜んでいる場所を探すのに少し苦労したが、どんなハンデがあったとしても引くわけにはいかない。――狩り勝負ときては。
 ディオルクがジュストに申し込んだのは、獲物の数を競う狩り勝負だった。何故突然そんなことを、と驚いたジュストだが、申し込まれた勝負を辞退する選択肢はない。
 サーベルタイガー一族の集落付近の森でそれぞれ獲物を狩ることになり、数時間。そろそろ終わりかとジュストが空を見上げたところで、繁みからディオルクが姿を現す。
「ああ、ジュスト殿。……おお、結構な数を捕られたな」
 そう言うディオルクも、背後の若者たちに背負わせた獲物の数はなかなかなものだ。数を数えた彼らが、同数ですと報告するのを聞いて、ジュストは苦笑して言った。
「引き分けのようだな、ディオルク殿」
「ああ、そうだな。……では次は、料理で勝負だ」
「……次?」
 まだ勝負を続ける気か、一体なんのために、とジュストが戸惑った、その時だった。
「いい加減にして下さい、ディオルク」
 ガサガサと繁みをかき分けて、小柄な人影が姿を現す。それは、どう見てもサーベルタイガー一族の者ではなく、ただの人間だった。銀色の髪のその青年にたしなめられたディオルクが、途端にバツの悪そうな表情を浮かべる。
「ルシュカ……、だが」
「ジュストさんは、ティタの選んだ方なんですよ。こんなことをして試す必要がどこにあるんですか」
 まるで叱るような口調のルシュカは、確かディオルクの伴侶となった、カーディアの元第二王子のはずだ。
「……試すとは?」
 尋ねたジュストに、ルシュカが説明する。
「申し訳ありません。ディオルクは生前ティタのお父さんと懇意にしていたので、勝手にティタの父親代わりのようなつもりでいるんです。それで、ジュストさんがティタに相応しい相手かどうか見定めようとしたんだと思います」
「……すまなかった。今日お会いして、ジュスト殿はいかにも立派な族長だと感じたが、それでもティタが心配でな」
 どうやら複雑な思いを抱いていたのは、ジュストだけではなかったらしい。
謝ったディオルクに、ルシュカが優しく微笑みかける。
「さ、ディオルク。早く帰って、この獲物でジュストさんたちをおもてなしする料理を作りましょう」
「ああ。ジュスト殿、詫びに腕を振るうから、是非食べていってくれ」
「あ……、ああ」
 心なしかしゅんとしているディオルクに頷き返しながら、ジュストは内心苦笑してしまった。
(……こちらの族長の弱点も、私と同じく己の番、か)
 夕焼けの向こうから、茜色の髪の少年が駆けてくる。
 愛らしい自分の伴侶に片手を上げて応えて、料理のできないジュストは心底ほっと、胸を撫で下ろしたのだった。

2019.3.3 J.GARDEN46フリーペーパー
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J.GARDEN46参加のお知らせ 

3/3に池袋サンシャインシティで行われるJ.GARDEN46に参加します。
新刊は2種で、個人誌『sweet,sweet,sweets』と合同誌『10th Anniversary』です。
今回はどちらもデビュー10周年記念の新刊となりました。


sweet表紙
『sweet,sweet,sweets』(A5/60P/500円)
これまで商業誌で出版されたノベルス・文庫全27作品の番外編SS集となります。
一応「甘いもの」がテーマですが、お菓子だけでなく果物だったり、花の香りだったりも含まれているので、ふんわりテーマという感じです。
すべて書き下ろしで、1作品につき見開き2ページずつの短いお話となります。
本編とは違う人の視点だったり、後日談だけでなく前日譚だったりもしますが、メインカップルのお話で揃えてあります。
懐かしの面々の甘い甘い番外編、是非お楽しみ下さい。
こちらはフロマージュさん、アニメイトさん、コミコミスタジオさんにて通販をお願いしておりますが、現在コミコミスタジオさんでしか通販ページがオープンになっておりません。
コミコミスタジオさん



10th表紙
『10th Anniversary』(A5/124P/1000円)
デビュー10周年を迎える作家4人の合同誌です。
月東湊先生、四ノ宮慶先生、成瀬かの先生とご一緒させていただいています。
「贈り物」をテーマに、それぞれの思い出の作品の番外編を書き下ろしました。
月東先生は『青龍の涙』『月下の涙』の番外編、
四ノ宮先生は『玩具の恋』の番外編、
成瀬先生は『僕の悪魔』の番外編、
私は『白狼王の愛嫁』『白狼王の恋妻』の番外編を書いています。
風邪をひいてしまったアディヤに代わって、我が子ルトのお世話をすることになるウルスのお話です。
赤ちゃんのルトに振り回され、ラシードと一緒にてんやわんやな新米パパのウルスですが、後半は通常運転で甘々エロもたっぷりなので、こちらも是非お楽しみに。
なお、こちらの通販はコミコミスタジオさんのみです。
コミコミスタジオさん


当日の既刊の持ち込みは『竜人と運命のユタンポ』と『白狼王の愛嫁 番外編再録集1』です。
再録集は再版となり、いつもより少なめの持ち込みです。

無配は2種で、『ユキヒョウの獣愛』のペーパーと、デビュー作『息をするよりキスがしたい』のサイン本となります。
ペーパーは、ジュストとディオルクの初対面の場面を書いてみました。
旅の間、ティタがベタ褒めしていたディオルクと実際に対面したら、きっとジュストは面白くないんだろうなと。
サイン本は、刊行時に出版社からいただいた献本の残部になります。
発刊時に毎回献本をいただくのですが、さすがに27冊ともなるとすごい量でして……。
このままでは家の床が抜けてしまうので処分しようと思っていたのですが、節目の年だし、折角なのでサインを入れてお配りしようかなと。
数に限りがありますが、先着順、一会計一冊ずつでお渡しさせていただきますので、お目当ての方はお早めにどうぞ。

また、当日は既刊本、同人誌へのサインも承りますが、頒布優先のため、なるべく13時以降においで下さい。
混雑時はいったんお預かりし、後ほど取りに来ていただく形を取らせていただきます。
13時くらいまではその場でのサインは難しいかと思われますので、あらかじめご了承下さい。
ではでは、当日スペースにてお待ちしておりますので、ご参加の方は是非お立ち寄り下さいv

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告知【文庫】 

新刊発売のお知らせです。
12/20キャラ文庫さんより、『臆病ウサギと居候先の王子様』が発売になります。
今年はタイトルに王子様が付く本が続きますね。甘々なお話が多いからかな?
ただ、今回は本物の王子様ではなく、イメージとしての王子様という感じです。
臆病ウサギは最初から決まっていたのですが、後半がなかなか決まらず、最終的に担当さんに決めていただきました。
居候先の王子様って? と思われるかもしれませんが、まさにその通りかなと思うので、お手にとってみていただけたら幸いです。

あらすじですが、今回は攻めの誠視点のお話になります。
ある雪の夜、傷ついて行き倒れていたウサ耳少年を助けた誠。
事情を離したがらず、名前も名乗りたがらない少年を、誠は雪と名付けて保護することに。
最初は臆病で無口な雪に戸惑う誠だが、次第に健気で一生懸命な彼に惹かれていく。
しかしそんなある日、雪に発情期が訪れ、更に彼の抱えている特殊な事情が判明し――。

挿絵は石田要先生にご担当いただきました!
後書きにもちらっと書いたのですが、実は今回、石田先生にお願いできると決まった時にはもう初稿が上がっていて。
今回はすごい美形とか、すごい権力者とかではない、ごく普通のサラリーマンを攻めにしようと思って書いたので、折角石田先生にお願いできるのなら今からでもものすごい美形にすべきでは……、いやでもそれだとお話が違ってきてしまうし、と最初はだいぶ煩悶しました。
ですが石田先生は、ごく普通にいそうで、でもなかなかこんな好青年いないよね、という絶妙な誠を描いて下さって。
受けの雪くんも、薄幸美人ながらウサ耳シッポがめちゃくちゃ可愛いのです……。
特に表紙の帯下のシッポが、今にもぴるぴる震え出しそうな可愛さなので、是非帯もめくってみて下さいv
もちろん、中の挿絵の色っぽいシーンもとても素敵なので、そちらもお楽しみにv

怖がりな子をとにかく甘やかして懐かせる、というお話が大好きなので、その部分をたっぷり書いてみました。
普通で平凡だけど、特別な相手と巡り会う、優しく甘い雰囲気のお話です。
冬のこの時期にぴったりな一冊、どうぞよろしくお願いいたします。

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J.GARDEN45お礼 

J.GARDEN45に参加してきました。
今回もたくさんの方にスペースまで足をお運びいただき、本当にありがとうございました。
おかげ様で新刊完売となり、後からいらして下さった方にはお渡しが叶わず、大変申し訳ありませんでした。
新刊の『竜人と運命のシッポ』の通販分はまだまだ在庫があるはずなので、よろしければそちらをご利用下さい。
また、既刊『竜人と運命のユタンポ』は通販分もイベント分もすべて完売となります。
お手にとっていただき、ありがとうございました!

毎回思いますが、イベントの数時間というのは本当に濃密ですね。
最近イベントの前夜は眠れないことが多く、今回も案の定そのパターンだったのですが、眠気なぞ!!! というとてもとても楽しい時間を過ごさせていただきました。
途中声がガラガラになってしまったり、ご挨拶に変なテンションでお応えしてしまったりと、相変わらず残念な感じで申し訳ありません。
でもまた懲りずに参加したいなと思いますので、春のJ.GARDENでもお会いできたら嬉しいですv

今回は無配が2種だったため、SSも2種置いておきますね。
『竜人と運命の対2』と『ユキヒョウの獣愛』のSSです。
竜人~のフリーペーパーは、以前Twitterでフォロワーさんが描いて下さった、ジーンが小さくなってしまったイラストがあまりにも可愛かったもので、それを元に書いてみたお話です。
元になったイラストは私のアカウントの「いいね」リストに入っていますので、是非合わせて見てみて下さいv
ユキヒョウのSSは、本編中のとある出来事を攻めのジュスト視点から綴ったものになりますので、未読の方はご注意下さい。



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『竜人と運命の対2 赤き月の縁』番外編 ~小さな幸せ~

 パチ、と目覚めた瞬間、違和感に襲われて、ジーンはその紅い瞳を眇めた。なにかが、おかしい。
「あ、ジーン、起きたのか。おはよう」
「陽翔……、おは……、っ⁉」
 おはよう、と返しかけて、ジーンは驚きに目を瞠る。
 いつもと同じ、溌剌とした表情を浮かべたその顔は、けれどいつもの数倍大きい。
 ――陽翔が、巨大化している。
「は、陽翔⁉ どうしたんだ、一体⁉」
 慌てて飛び起きたジーンは、そこでようやく気づく。
だだっ広い寝台、白い敷布はまるで海のようで、部屋も家具も、枕でさえも普段の数倍大きい。これは――。
「お……、俺が、小さくなっているのか……⁉」
 愕然として自分の両手を見つめたジーンだったが、その時、体がふわりと浮く。ハッとして顔を上げると、陽翔に両手ですくい上げられていた。
「もう、なに言ってるんだよ、ジーン。ジーンは前からこの大きさだっただろ」
「…………」
 そうだっただろうか。そんなことはないと思うのだが、陽翔に言われると、だんだんそんな気がしてくる。むむむ、と両腕を組んで考え込んでしまったジーンだったが、陽翔は自分の肩にジーンを乗せると、鼻歌まじりで歩き出す。
 寝室を出て、着いた先は大広間だった。
 酒宴でも開かれるのだろうか。毛織りの絨毯の上には、大皿に盛り付けられた料理がずらりと並んでいる。
 陽翔はその端に座り込むと、さてと、と目を輝かせて両手を合わせた。
「いただきます! ほら、ジーンも!」
「あ……、ああ……」
 呑気に食事などしていていいのだろうか、と戸惑いつつも頷いたジーンだったが、陽翔は山積みにされた平たいパンをちぎるなり、それをジーンの口元に差し出してくる。
「はい、アーン」
「……! いただこう!」
 滅多にない陽翔からの『アーン』に、ジーンはそれまでの違和感も忘れていそいそと口を開いた。小さな尾をふりふり揺らしながらパンを食べるジーンに、陽翔がにひひと笑いかけてくる。
「美味し? やっぱりご飯はこうやって食べるのが一番美味いよな!」
 照れる様子もなく、オレも食べよっと、と残りのパンをもぐもぐ食べ始めた陽翔に、ジーンは感動してしまった。
 こんな奇跡、滅多にない。
「陽翔、俺からもお前に……!」
 自分も陽翔に『アーン』をすべく、ジーンは陽翔の肩から飛び降りると、彼の好物である肉饅頭を取り分けようとした。――しかし。
「く……っ!」
 特大の肉饅頭は重すぎて、持ち上げた途端によろめいてしまう。両手いっぱいに肉饅頭を抱え、どうにか陽翔のところへ運ぼうとするジーンに、陽翔が苦笑を零した。
「無理すんなよ、ジーン」
「いや、大丈……っ⁉」
 大丈夫だ、と言いかけたジーンだったが、顔を上げた途端、異様な光景に唖然としてしまう。
「な……⁉」
 大皿に盛られた料理を次から次に平らげている陽翔の体が、みるみるうちに膨らんでいくのだ。ジーンの数倍あった体は、あっという間に十倍、二十倍に膨れ上がり――。
「陽翔……!」
 叫んで身を起こした途端、パッと目の前の景色が切り替わって、ジーンは見開いた目をパチパチと瞬かせた。
 先ほどまであった料理はどこにもなく、視界に映るのはいつもの自分の寝室だ。家具の大きさも普段と同じ、見慣れたサイズに戻っている。
「ゆ……、夢、か……?」
 呟いた途端、すぐ隣でウーンと声が上がる。
「ジーン、うるさい……」
 むにゃむにゃと文句を言う陽翔はいつものサイズで、枕を抱え込んでいる。掛け布団を蹴り飛ばしながらまた眠りについた陽翔を見下ろし、ジーンはほっと息をついた。
 陽翔の肩に乗せられたり、『アーン』してもらえるのは嬉しいけれど、やはりこうでなくては落ち着かない。
「……陽翔」
 囁きながら身を屈めると、ジーンは恋人の腕の中から枕を取り上げ、邪魔だとばかりに床に放り捨てた。むー、と眉を寄せ、なくなった枕を求めてパタパタと敷布の上を手で探る陽翔の隣に横たわり、その腕を自分に回させる。
 むーむーと、納得いかないように唸る恋人に苦笑しながら、ジーンはそのあたたかい体を抱きしめた。腕の中にすっぽりおさまる小ささが愛おしくて、やわらかな髪に鼻先を埋め、その匂いを胸いっぱいに吸い込む。
 唯一無二の番からは、日向に咲いた夏の花のような香りがした。
「……愛している」
 くちづけを落とすと、無意識にだろう、ぎゅっと陽翔の腕に力がこもる。小さな、小さな幸せを噛みしめるように抱きしめ返して、ジーンはそっと、目を閉じたのだった。

 2018.10.21 J.GARDEN45フリーペーパー



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『ユキヒョウの獣愛 お試し読み小冊子』
書き下ろしSS『ユキヒョウのシッポ』

 すうすうと、穏やかな寝息を立てる夕焼け色の髪の青年を見下ろして、ジュストはふむ、と考えた。
(……意外に睫が長いのだな、ティタは)
 今は閉じられているティタの瞳は、初夏の新緑を思わせる若草色をしている。一年のほとんどが雪と氷に覆われ、長い冬が続く最北の地で生まれ育ったジュストにとって、生命の輝きを彷彿とさせる彼の髪と瞳はとても好ましいものだった。
 カーディアの市場で出会ったティタと共にユキヒョウ一族の地へと旅をし始めてから、数日が経った。疲労のあまり発熱しているくせに、なかなかそれを言い出そうとしないティタに業を煮やし、早めに宿をとって強引に彼を休ませたジュストだったが、どうやらその判断は正解だったらしい。
薬が効いてきたのか、落ち着いてきた様子のティタに、ジュストは内心ほっと胸を撫で下ろした。
 そばかすの散る頬にかかる彼の髪を、黒い爪の先でそっと掻き上げる。すると、んん、と小さくむずがったティタが、ころりと寝返りをうち、ジュストに背を向けてぽつりと呟いた。
「……母さん……」
 夢を見ているのだろうか。苦しげな声で母を呼んだティタが、次第に肩を震わせ始める。
ひくひくと息をつめ、ほろりと涙を零した彼の細い肩を、ジュストは思わず後ろから抱きしめていた。
「大丈夫だ、ティタ。……なにも案ずるな」
 夢の中の彼にそっと囁きかけ、小さな体を太く長い尾でふわりと包み込む。とん、とん、と幼い子供を寝かしつけるように尻尾の先でリズムを刻むと、悲しげだったティタの表情が次第にやわらいできた。
 自分の腕の中でほっとしたような顔つきに変わっていくティタを見つめていると、今まで感じたことのないようなあたたかさが胸の奥に広がっていく。
 ふわふわとやわらかい、それでいてどこかせつないその感情に、ジュストが戸惑いを覚えかけた、その時だった。
ん……、とかすかに呻いたティタが、ジュストの尻尾の先をぎゅっと握りしめてくる。
「……っ⁉」
 息を呑んで身を強ばらせたジュストだったが、ティタはふこふこと揺れるユキヒョウの尻尾をきゅうっと握りしめると、ふにゃ、ととろけそうな笑みを浮かべた。 ――そして。
「は……、んむ」
 はむ、と尻尾の先を咥えたティタに、ジュストはそのアイスブルーの瞳を大きく見開き、白銀の斑紋が浮かぶ背中の被毛をぶわりと逆立てた。
「な……っ、……っ」
 なにをする、と怒鳴りそうになって、慌てて口をつぐむ。彼を休ませるため、こうして強引に寝かしつけたというのに、今叩き起こしたらなんの意味もなくなってしまう。
(だ……、だがしかし、いくらなんでもこれは……)
 けれどティタは、そんなジュストの心の葛藤などお構いなしに、尻尾の先をちゅうちゅうとしゃぶり出す。この上なく幸せそうで、安心しきったその表情を見ているうち、ジュストはなんだか些末なことがどうでもよくなってきてしまった。
(……まあ、よいか)
 ティタが安心して眠れるのならば、自分の尻尾くらいいくらでも咥えればいい。
「しかし、まるで子供だな……」
 甘えるように尻尾をしゃぶるティタを見下ろして、ジュストはふっと笑みを浮かべた。
 小さな体で、いつも懸命に頑張っているのだ。
 せめて自分がそばにいる時くらいは、心安らかに過ごさせてやりたい。……守って、やりたい。
「……ティタ」
 呟いたジュストのアイスブルーの瞳に、ティタの髪が映り込む。その美しい夕焼け色に惹きつけられるように、ジュストはそっと、彼の髪に鼻先を埋めたのだった――。

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告知【ノベルス】&J.GARDEN45参加のお知らせ 

新刊発売と、イベント参加のお知らせです。
立て続けなもので、長くなってすみません!

まずは新刊のお知らせから。
10/19に『ユキヒョウの獣愛』がリブレさんより発売になりました。
厳密な意味での続編ではないのですが、既刊『サーベルタイガーの獣愛』のスピンオフです。
今作単体でも問題なく読めますが、前作の主役のルシュカとディオルクも出てきますので、読了済の方にはより楽しんでいただけるかなと思います。

挿絵は前作に引き続き、九重シャム先生に描いていただけましたv
九重先生のユキヒョウ獣人なので、素敵なのはもう言うまでもないのですが、なんといっても今回も表紙のティタが笑顔なのが嬉しくて!
サーベルタイガーの時のルシュカの笑顔も幸せそうで大好きなので、ティタもキュートな笑顔にしていただいてとても嬉しかったです。
周りのお花や果物、衣装の細かな刺繍部分、ジュストの青い瞳や斑紋と、細部に渡って美しく彩っていただいていますので、是非ご堪能下さい。
もちろん表紙だけでなく、中も素敵な挿絵揃いで、サーベルタイガーの時とまた違う雰囲気の民族衣装や、もふもふ体格差もたっぷりです。
帯にも中の挿絵を使っていただいているので、そちらも是非ご覧下さいv

あらすじですが、今回は獣人になれない獣人のティタが主役です。
サーベルタイガー一族でありながらも、生まれつき獣人姿になれないティタ。
けれど誰よりも優れた嗅覚を持っており、それを活かして薬師として奮闘していた。
しかしある日、ティタの母が病に倒れてしまう。
母を助けるため、氷の花という薬草を求めて北の地へと旅立ったティタは、旅の途中でユキヒョウ族の族長、ジュストと出会う。
氷の花を管理しているという彼に、薬草を分けてもらえないか頼むティタだが、人間嫌いのジュストは獣人姿になれないティタのことを疑い――。

今回のお話は、獣人姿になれない獣人を書いてみたいなと思って生まれたお話になります。
こういうちょっとした変化球は、何作か獣人ものを出した上でないと投げられないので、書くことができて嬉しいです。
主人公のティタは、幼い頃から獣人姿になれないことがコンプレックスで、でも自分の力を活かし薬師になった子です。
彼は自分でも薬草を育てているのですが、その薬草みたいな逞しさがある子だなと思います。
ちゃんと自炊もできるし、薬草の知識なら誰にも負けないけど、でもその境遇から故郷を出たことがなく世間知らず。
家族思いで優しく、一途で健気な子です。
攻めのジュストはユキヒョウ族の族長で、とある事情から人間嫌いですが、本当は誰よりも優しい獣人です。
敵には容赦ないけれど、懐に入れた友人や身内への情は人一倍篤く、構いたがりの世話焼きたがり。ちょっと天然でツンデレかなと思います。

脇役はジュストの妹のアリーシャ、腹心キリル、後半に入って叔父のイゴール、宰相のカミラ、友人ロウと今回ちょっと多めです。
お気に入りは、後書きにも書きましたがカミラさんと鳥人のロウです。
この二人は完全にその場のノリで書き始めたキャラで、プロットには一つも出てこなかった人たちなのですが、その分なんというか勢いがよくて、とても書きやすかったです。
特に、姫様(アリーシャ)至上主義のカミラさんはまるで宝塚か百合かといった雰囲気で、前作のルシュカ溺愛の兄、セリクといい勝負(?)なんじゃないかなと思っています。
ロウもそんなカミラさんに想いを寄せているのですが、多分女神のように崇めているんじゃないかな……。
誰かを偏愛している人は書いていて楽しいな、と改めて思った二人です。

なかなかタイトな執筆スケジュールで、しかも大幅改稿をやらかし、難産だった一作なのですが、サーベルタイガー獣人族の様子や、前作を読んで下さっている方には「おっ」と思っていただけるような部分など、いろいろ盛り込んでみました。
お見かけの際は是非、よろしくお願いいたします。



そしてそして、イベント参加のお知らせです。
10/21に池袋サンシャインシティで行われるJ.GARDEN45に参加します。
新刊は『竜人と運命のシッポ』です。
『竜人と運命の対2 赤き月の縁』の番外編後日談になります。

表紙
A5/36P/300円

戦の事後処理でソヘイルに残っているジーンと陽翔。
声も取り戻し、元気いっぱいに見える陽翔だが、ジーンのシッポにやたらと抱きついてくるという珍事が発生して……。
という、いちゃいちゃ(?)後日談になります。
(?)の詳細は是非お読みになってお確かめ下さいv

こちらはフロマージュさん、アニメイトさん、コミコミスタジオさんにて通販をお願いしております。
フロマージュさん
アニメイトさん
コミコミスタジオさん
お試し読みも冒頭と、お布団シーン突入部分の計4Pを載せていただいていますので、是非ご覧下さい。


当日の既刊の持ち込みは『竜人と運命のユタンポ』と『猫可愛がり彼氏の初エプロン』です。
ユタンポは残部があと数冊となりますので、お求めの方はお早めにどうぞ。
こちらは通販分も完売しており、再版は致しません。
また、既刊はどちらも発行時のペーパーをお付けしますが、先着順となります。
数に限りがありますので、あしからずご了承下さい。

今回の無配は2種です。
冒頭でお知らせした『ユキヒョウの獣愛』のお試し読み小冊子と、竜人のペーパーとなります。
お試し読み小冊子は、冒頭2場面と書き下ろしSSを収録した24P豪華版です。
最初は冒頭だけにして、ペーパーにしようかと思っていたのですが、書影を使わせていただけることになり、せっかくなのでカラーがいいな、どうせだったら可能な限りたっぷり読んでいただけるように小冊子にしよう、ついでに読了済みの方も楽しんでいただけるようにSSも書いて、とあれこれし始めたらとまらなくなりました。
美しい書影を全面に押した小冊子にしたので、まだ購入を迷っていらっしゃる方も、もう購入済みの方も、是非是非お持ち帰り下さいv
竜人のペーパー分と併せて、SSはどちらも後日このブログにアップしますので、当日お越しになれない方もまた覗いていただけると嬉しいです。
また、当日は既刊本、同人誌へのサインも喜んでさせていただきますが、混雑時にはいったんお預かりし、後ほど取りに来ていただく形を取らせていただきます。
13時くらいまではその場でのサインは難しいかと思われますので、あらかじめご了承下さい。
ではでは、イベント頑張ってきます!
当日ご参加の方は是非お立ち寄り下さいv

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